

写真: Jnn / Wikimedia Commons(CC BY 2.1 jp)
白いかべに黒い板、屋根にはいくつもの破風がかさなり、小さいながらも気品ただよう天守――。滋賀県彦根市の「彦根城」は、江戸時代から残る天守が国宝に指定されている、日本でわずか5つしかない「国宝の城」のひとつです。
彦根城は、徳川家康の重臣だった井伊家の城として、江戸時代のはじめに築かれました。天守だけでなく、天秤櫓や太鼓門櫓などの櫓、高い石垣、堀、そして大名庭園の玄宮園まで、江戸時代の城のすがたが今もよく残っています。
2026年9月には、ユネスコの世界文化遺産をめざす日本の推薦候補に選ばれ、いま大きな注目を集めています。人気キャラクター「ひこにゃん」に会える城としても知られ、城下町の夢京橋キャッスルロードでの食べ歩きも楽しめます。
この記事では、彦根城の基本情報と歴史、国宝天守と櫓の見どころ、玄宮園、彦根城博物館、四季の楽しみ方、城下町のグルメ、アクセス、モデルコースまで、はじめての人にもわかりやすく紹介します。
彦根城の基本情報
まずは基本の情報を表にまとめました。料金や時間は変わることがあるので、お出かけ前に公式サイトで確認してください。
| 名称 | 彦根城(国宝 彦根城) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県彦根市金亀町1-1 |
| 指定 | 天守・附櫓・多聞櫓が国宝、天秤櫓・太鼓門櫓・西の丸三重櫓などが国の重要文化財、城跡は国の特別史跡 |
| 開場時間 | 8:30〜17:00(最終入場は16:30。天守などの建物の中は16:45に閉門) |
| 休み | 年中無休 |
| 入場料(彦根城・玄宮園) | 一般1,000円/小・中学生300円 |
| セット券(+彦根城博物館) | 一般1,500円/小・中学生550円 |
| 問い合わせ | 彦根城運営管理センター 0749-22-2742 |
| 公式サイト | 国宝 彦根城 |
入場料は2024年10月から上の料金になっています。彦根城の入場券で玄宮園にも入れます。彦根城博物館もあわせて見るなら、セット券がお得です。
彦根城の歴史
1600年の関ヶ原の戦いのあと、徳川家康の重臣・井伊直政は、近江国(今の滋賀県)の佐和山城をあたえられました。直政の死後、子の直継(直勝)の時代に、新しい城として彦根山に築かれたのが彦根城です。
築城は1604年ごろにはじまり、幕府の命令で近くの大名たちも手伝う「天下普請」で進められました。天守は1606年ごろに完成したと考えられています。その後も工事は続けられ、城全体が完成したのは1622年ごろといわれています。
彦根城は、江戸時代を通じて井伊家の居城でした。井伊家からは、幕末に大老となった井伊直弼など、幕府の重要な役職につく人物が多く出ています。明治時代に多くの城がこわされるなか、彦根城の天守はこわされずに残り、1952年に国宝に指定されました。
世界遺産をめざす彦根城
彦根城は、1992年にユネスコの世界遺産の暫定一覧表に記載されました。それから30年以上をへて、2026年9月、文化庁の文化審議会で、世界文化遺産の国内推薦候補に選ばれました。
天守や櫓、石垣、堀、大名庭園など、江戸時代の大名の城とそのまわりのつくりがまとまって残っていることが、大きな特ちょうとされています。地元では登録への期待が高まっていて、今後の動きにも注目が集まっています。登録が決まるまでには、まだ審査などの手続きがあります。
国宝・彦根城天守

写真: Suicasmo / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
彦根城のシンボルが、国宝の天守です。3階3重の天守は、大きさは決して大きくありませんが、屋根にいくつもの破風(はふ)がかさなり、2階と3階には花頭窓(かとうまど)がならぶなど、とてもはなやかなつくりです。
天守は、大津城の天守を移築したものと伝えられています。天守の中に入ると、太い柱や梁、敵をうつための「鉄砲狭間」や「矢狭間」など、戦いにそなえたしくみを見ることができます。
天守の中の階段はとても急でせまいので、手すりにつかまって、ゆっくり上り下りしましょう。くつをぬいで上がるので、くつ袋を持っていくと便利です。最上階からは、琵琶湖や彦根の町を見わたすことができます。
現存12天守と国宝5城
日本には、江戸時代かそれ以前に建てられた天守が今も残っている城が12あり、「現存12天守」とよばれています。その中でも、天守が国宝に指定されているのは、姫路城、松本城、犬山城、松江城、そして彦根城の5つだけです。
ほかの城の多くは、天守を戦後に再建したものです。江戸時代の職人がつくったそのままの天守に入れる彦根城は、とても貴重な体験ができる場所です。お城好きの人は、ほかの国宝の城とくらべてみるのもおもしろいですよ。
天秤櫓と廊下橋

写真: ブレイズマン / Wikimedia Commons(Public domain)
天守へ向かう途中にあるのが、国の重要文化財の「天秤櫓(てんびんやぐら)」です。中央の門を中心に、左右に櫓が広がる形が、天びんのように見えることから、この名前がつけられました。
天秤櫓の前には、堀切(ほりきり)とよばれる深いみぞに「廊下橋」がかかっています。戦いのときには、この橋を落として敵が入れないようにしたといわれています。

写真: ブレイズマン / Wikimedia Commons(Public domain)
天秤櫓の石垣をよく見ると、右と左で石の積み方がちがいます。江戸時代の修理のあとで、時代による技術のちがいを見くらべることができます。
太鼓門櫓と西の丸三重櫓

写真: z tanuki / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)
天守のある本丸の入口にあるのが「太鼓門櫓」です。櫓の中に太鼓を置いて、合図に使っていたといわれています。城の背面側が開いているめずらしいつくりで、太鼓の音がよくひびくための工夫だったとも考えられています。

写真: ブレイズマン / Wikimedia Commons(Public domain)
本丸の西側にある「西の丸三重櫓」は、3階建ての櫓です。ここからは、琵琶湖の方向をながめることができ、天守とはまたちがった景色を楽しめます。どちらも国の重要文化財です。
登り石垣と堀切 ― 守りのしくみ
彦根城には、敵の攻撃から城を守るためのしくみがたくさんあります。そのひとつが、山の斜面にそって石垣をのぼるように積んだ「登り石垣」です。斜面を横に移動する敵をふせぐためのもので、全国でもめずらしいつくりといわれています。
城の入口から天守までは、高低差が約50メートルあり、石段がまがりくねりながら続きます。石段は高さや幅がそろっていないところもあり、敵が走って上りにくいように工夫されているともいわれています。歩きやすいくつで、ゆっくり登りましょう。
馬屋 ― 全国でめずらしい城の馬小屋

写真: 先従隗始 / Wikimedia Commons(CC0)
佐和口の近くにある「馬屋」は、藩主などの馬を飼っていた建物で、国の重要文化財です。城の中に残る江戸時代の馬屋は全国でもとてもめずらしく、L字形の建物の中には、馬をつないだ仕切りが並んでいます。
馬屋の中は無料で見学できます。馬の模型も置かれていて、当時のようすを想像しながら見ることができます。
玄宮園 ― 天守をのぞむ大名庭園

写真: ttshr1970 / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)
彦根城の北東にある「玄宮園」は、江戸時代に井伊家がつくった大名庭園です。大きな池のまわりを歩いて楽しむ「池泉回遊式庭園」で、池の向こうに国宝の天守を見上げる景色は、彦根城を代表する風景のひとつです。

写真: Hyppolyte de Saint-Rambert / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
庭園の中には、茶室の「鳳翔台」があり、お抹茶とお菓子をいただきながら、庭と天守の景色を楽しめます(有料)。となりの「楽々園」は、藩主の下屋敷だった場所です。彦根城の入場券で玄宮園にも入れるので、ぜひ立ち寄りましょう。
彦根城博物館
彦根城の表御殿があった場所に建てられた「彦根城博物館」では、井伊家に伝わる美術品や歴史資料を見ることができます。よろいかぶとなどの武具、能面や能装束、茶道具、古文書など、大名家の文化をいろいろな角度から知ることができます。
館内には、復元された能舞台や、藩主が暮らした奥向きの部屋もあります。開館時間は8:30〜17:00(入館は16:30まで)です。お城とあわせて見るなら、セット券がお得です。
お堀めぐりと佐和口多聞櫓

写真: Sutou / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
彦根城のまわりには、石垣と水をたたえた堀がめぐっています。中堀ぞいの道は、散歩やジョギングをする人も多い、気持ちのいい遊歩道です。
佐和口にある「佐和口多聞櫓」は、長くのびる櫓で、国の重要文化財です。季節によっては、屋形船で堀をめぐる観光船も運航されていて、水の上から石垣や櫓をながめることができます。
埋木舎 ― 井伊直弼が青年時代をすごした家

写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY 2.5)
中堀ぞいにある「埋木舎(うもれぎのや)」は、幕末の大老・井伊直弼が、17歳から32歳までの青年時代をすごした屋敷です。藩主の子でありながら、家をつぐ見こみがなかった直弼は、この屋敷で茶道や和歌、禅などの学問や芸術にはげみました。
直弼は自分を、花をさかせることのない「埋もれ木」にたとえて、この屋敷を埋木舎と名づけたといわれています。のちに思いがけず藩主となり、さらに幕府の大老として日本の開国にかかわる大きな決断をしました。公開時期や時間は限られているので、事前に確認しましょう。
ひこにゃんに会える城
彦根城といえば、人気キャラクター「ひこにゃん」をわすれてはいけません。井伊家の殿さまを雷雨から救ったと伝わる白いねこがモデルで、井伊家の赤いかぶとをかぶっています。
ひこにゃんは、彦根城の中で、決まった時間に登場することがあります。登場の時間や場所は日によって変わるので、彦根城の公式サイトやひこにゃんの公式情報で確認しましょう。ひこにゃんのグッズは、おみやげにも人気です。
四季の彦根城

写真: Martin Falbisoner / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
春は、城のまわりの桜が咲きほこり、天守や堀を桜がいろどります。4月上旬ごろが見ごろで、夜のライトアップが行われることもあります。秋は、紅葉と天守の組み合わせが美しく、玄宮園の紅葉もみごとです。

写真: Shirakawa-yobune / Wikimedia Commons(CC BY-SA 1.0)
冬に雪が積もると、白い雪におおわれた天守が、いっそう気品あるすがたを見せてくれます。彦根は冬に雪が降ることもあるので、冬に行くときは、すべりにくいくつで出かけましょう。
夢京橋キャッスルロードとグルメ

写真: Sakaori / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)
彦根城の京橋口から南へのびる「夢京橋キャッスルロード」は、江戸時代の城下町をイメージした町並みが続く通りです。白かべと黒い格子の建物に、和菓子屋さんや飲食店、おみやげ屋さんが並び、食べ歩きを楽しめます。
彦根に来たら、ぜひ味わいたいのが、日本三大和牛のひとつにも数えられる「近江牛」です。すき焼きやステーキのほか、近江牛のコロッケや串焼きなど、手軽に食べられるメニューもあります。ほかにも、和風だしのスープが特ちょうの「近江ちゃんぽん」や、琵琶湖の鮎、ふなずしなど、滋賀ならではの味がいろいろあります。
あわせて行きたい周辺スポット
彦根から足をのばすなら、「お多賀さん」とよばれて親しまれる「多賀大社」がおすすめです。長寿や縁むすびのご利益で知られ、名物の「糸切餅」も人気です。
JR琵琶湖線で北へ向かうと、ガラス工房やお店が並ぶ「黒壁スクエア」のある長浜の町があります。南へ向かえば、八幡堀の水辺の景色や近江商人の町並みが美しい近江八幡があります。日本最大の湖・琵琶湖のほとりをドライブしたり、湖を見わたせる場所でひと休みしたりするのも、滋賀ならではの楽しみ方です。
彦根城へのアクセス

写真: Saigen Jiro / Wikimedia Commons(CC0)
| 京都から | JR琵琶湖線(東海道本線)の新快速で彦根駅まで約50分 |
|---|---|
| 名古屋から | 東海道新幹線で米原駅まで行き、JR琵琶湖線に乗りかえて彦根駅へ(約1時間前後) |
| 彦根駅から | 徒歩約15分 |
| 車で | 名神高速道路 彦根ICから約10分前後(周辺の有料駐車場を利用) |
彦根駅の西口を出て、まっすぐ歩くと彦根城に着きます。駅前の通りからも、天守が見えることがあります。米原駅は新幹線の停車駅なので、東京や名古屋方面からも行きやすい場所です。所要時間は目安なので、最新の時刻表を確認してください。
おすすめモデルコース
| 9:00 | JR彦根駅から歩いて彦根城へ |
|---|---|
| 9:20 | 表門から入城し、天秤櫓と廊下橋を見学 |
| 10:00 | 太鼓門櫓をくぐって国宝天守へ |
| 10:45 | 西の丸三重櫓から琵琶湖方面をながめる |
| 11:30 | 玄宮園で天守をのぞむ庭園を散策、鳳翔台でお抹茶 |
| 12:30 | 夢京橋キャッスルロードで近江牛のランチ |
| 14:00 | 彦根城博物館を見学 |
| 15:30 | 馬屋・佐和口多聞櫓を見て、中堀ぞいを散歩 |
天守までは石段の上り下りがあるので、時間に余裕をもって回りましょう。時間があれば、琵琶湖ぞいの景色や、近くの多賀大社などに足をのばすのもおすすめです。
彦根城を楽しむためのポイント
- ① 天守や櫓の中はくつをぬいで上がるので、くつ袋があると便利。
- ② 天守の階段はとても急。荷物は少なめにして、手すりにつかまって上り下りしよう。
- ③ 入口から天守までは石段が多いので、歩きやすいくつで。
- ④ 玄宮園は彦根城の入場券で入れるので、セットで楽しもう。
- ⑤ ひこにゃんの登場時間は日によって変わるので、事前に確認しよう。
よくある質問
彦根城の入場料はいくらですか?
彦根城(玄宮園をふくむ)は一般1,000円、小・中学生300円です。彦根城博物館とのセット券は一般1,500円、小・中学生550円です。
彦根城の開場時間は?
8:30〜17:00です。最終入場は16:30で、天守などの建物の中は16:45に閉門します。年中無休です。
彦根駅から彦根城まではどのくらいですか?
JR彦根駅から歩いて約15分です。
彦根城は世界遺産ですか?
2026年9月に、世界文化遺産の国内推薦候補に選ばれました。登録が決まるまでには、まだ審査などの手続きがあります。
天守を見学するのにどのくらい時間がかかりますか?
入口から天守まで歩いて登り、天守の中を見学するだけなら1時間ほどです。玄宮園や博物館もあわせて見るなら、半日ほどみておくと安心です。
ひこにゃんにはいつ会えますか?
ひこにゃんは彦根城で決まった時間に登場することがありますが、日によって変わります。公式サイトなどで最新の情報を確認してください。
まとめ
彦根城は、江戸時代の天守がそのまま残る、日本に5つしかない国宝の城のひとつです。はなやかな天守、天秤櫓や太鼓門櫓、守りのくふうがつまった石垣、天守をのぞむ玄宮園、そして城下町の夢京橋キャッスルロード。世界遺産をめざす今、ますます注目が集まっています。
石段にそなえて歩きやすいくつで、ゆっくり時間をかけて、江戸時代のお城の世界を体感してください。
参考情報
※この記事の情報は執筆時点のものです。開場時間、料金などは変わることがありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。



