兼六園

兼六園の徽軫灯籠
兼六園
兼六園の徽軫灯籠
秋の霞ヶ池にたたずむ徽軫灯籠。兼六園のシンボルです
写真: KimonBerlin / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

池のほとりに、二本の脚ですっと立つ石の灯籠。そのむこうには、ゆったりと枝を広げる松と、静かな水面。石川県金沢市にある「兼六園(けんろくえん)」は、水戸の偕楽園、岡山の後楽園とならぶ「日本三名園」のひとつです。

兼六園は、加賀藩の歴代藩主・前田家が長い年月をかけてつくりあげた大名庭園です。広さは約11.7ヘクタール。池や流れ、築山、茶屋、そしてたくさんの木々が、歩くたびにちがう景色を見せてくれます。国の特別名勝にも指定されています。

春の桜、初夏の新緑とカキツバタ、秋の紅葉、そして冬の雪吊り。兼六園は、一年中どの季節に訪れても美しい庭園です。

この記事では、兼六園の名前の由来と歴史、徽軫灯籠や霞ヶ池などの見どころ、四季の楽しみ方、入園料と開園時間、周辺の金沢観光、アクセス、モデルコースまで、はじめての人にもわかりやすく紹介します。

兼六園の基本情報

まずは基本の情報を表にまとめました。時間や料金は変わることがあるので、お出かけ前に公式サイトで確認してください。

名称特別名勝 兼六園(けんろくえん)
所在地石川県金沢市兼六町
開園時間3月1日〜10月15日 7:00〜18:00(最終入園17:30)/10月16日〜2月末日 8:00〜17:00(最終入園16:30)
休園日年中無休
入園料大人(18歳以上)320円、小人(6歳〜18歳未満)100円
支払い現金のほか、クレジットカード、交通系ICカード、電子マネーなど
アクセスJR金沢駅からバスで約12分「兼六園下・金沢城」下車、徒歩約5分
問い合わせ石川県金沢城・兼六園管理事務所 076-234-3800
霞ヶ池のほとり
木々に囲まれた霞ヶ池の静かな水面
写真: Chi King / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

「兼六園」の名前の由来

「兼六園」という名前は、中国・宋の時代の書物『洛陽名園記』に由来するといわれます。この本では、すぐれた庭園には六つの長所があると書かれています。

それは「宏大(広々としていること)」と「幽邃(奥深く静かなこと)」、「人力(人の手が加わっていること)」と「蒼古(古びた趣があること)」、「水泉(水が豊かなこと)」と「眺望(眺めがよいこと)」です。広さと静けさ、人の手と自然の古さ、水と眺め。ふつうは両立しにくいこの六つを兼ね備えていることから、「兼六園」と名づけられました。

名づけたのは、江戸時代の老中・松平定信と伝えられています。園内を歩きながら、この六つの魅力を探してみるのも楽しいですよ。

兼六園の歴史:前田家がつくった大名庭園

兼六園のはじまりは、江戸時代の延宝4年(1676年)、加賀藩5代藩主・前田綱紀が、金沢城に向かい合う斜面に「蓮池御亭(れんちおちん)」を建て、そのまわりに庭をつくったことだといわれています。

その後、歴代の藩主たちが少しずつ手を加え、13代藩主・前田斉泰(なりやす)の時代に、いまの兼六園に近い姿になりました。加賀百万石と呼ばれた前田家の豊かさと、文化への深い思いが、この庭園に込められています。

明治時代になると、兼六園は一般の人々にも開放されました。昭和60年(1985年)には、国の特別名勝に指定されています。

日本三名園とは

「日本三名園」とは、金沢の兼六園、水戸の偕楽園、岡山の後楽園の三つの庭園のことです。どれも江戸時代に大名がつくった庭園で、それぞれにちがった魅力があります。三つすべてを訪れるのを楽しみにしている旅行者もいます。

徽軫灯籠:兼六園のシンボル

徽軫灯籠と虹橋
二本の脚が琴の糸を支える「琴柱」に似た徽軫灯籠
写真: KimonBerlin / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

兼六園でいちばん有名な景色が、霞ヶ池のほとりに立つ「徽軫灯籠(ことじとうろう)」です。二本の脚が、琴の糸を支える「琴柱(ことじ)」に似ていることから、この名前がついたといわれています。

よく見ると、二本の脚の長さがちがい、一本は水の中に、もう一本は石の上に立っています。手前にかかる石の橋「虹橋(にじばし)」とあわせて眺めると、まるで一枚の絵のような景色です。金沢を紹介する写真やポスターにもよく登場する、いちばん人気の撮影スポットです。

霞ヶ池と唐崎松

霞ヶ池
園内でいちばん大きな池・霞ヶ池
写真: Tbatb / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

園内の中心にある「霞ヶ池(かすみがいけ)」は、兼六園でいちばん大きな池です。池の中には「蓬莱島(ほうらいじま)」という島がうかび、まわりを歩くと、灯籠や松、茶屋などがつぎつぎに現れます。

池のほとりには、13代藩主・前田斉泰が琵琶湖の唐崎から種を取り寄せて育てたといわれる「唐崎松(からさきのまつ)」があります。大きく横に枝を広げた姿は見事で、冬には雪吊りの姿でも知られています。

池の中の蓬莱島は、亀のような形をしていることから「亀甲島」とも呼ばれます。池にせり出すように建つ茶屋「内橋亭(うちはしてい)」からの眺めも見事です。

園内の見どころ

根上松

根上松
土から根が高く盛り上がった根上松
写真: lienyuan lee / Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

「根上松(ねあがりまつ)」は、地面から根が高く盛り上がった、ふしぎな姿の松です。13代藩主・前田斉泰が、土を盛った上に若い松を植え、大きく育ってから土を取りのぞいて根を見せたものと伝えられています。

噴水

兼六園の噴水
日本最古といわれる噴水
写真: Jovandavid / Public domain

霞ヶ池の近くにある噴水は、日本でいちばん古い噴水といわれています。ポンプなどの機械を使わず、霞ヶ池との高低差を利用して水を噴き上げています。水面の高さによって、噴水の高さが変わるのもおもしろいところです。

雁行橋

雁行橋
雁が列をなして飛ぶ姿に見立てた雁行橋
写真: KimonBerlin / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

「雁行橋(がんこうばし)」は、亀の甲らのような形の石を、雁が列をなして飛ぶ姿のようにならべた橋です。「亀甲橋」とも呼ばれます。現在は石がすりへるのを防ぐため、橋を渡ることはできませんが、そのめずらしい形を眺めることができます。

眺望台と山崎山

霞ヶ池の北側にある眺望台からは、卯辰山(うたつやま)や金沢の街並みを見わたせます。「眺望」は兼六園の六つの長所のひとつ。晴れた日には遠くの山々まで見えることもあります。また、園内の小高い山・山崎山は紅葉の名所として知られています。

時雨亭で抹茶をいただく

時雨亭の茶室
時雨亭の茶室。抹茶とお菓子でひと休みできます
写真: Benh LIEU SONG / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

園内の「時雨亭(しぐれてい)」は、かつて藩主のくつろぎの場として使われた建物を、平成になって再建したものです。座敷から庭を眺めながら、抹茶と和菓子をいただくことができます(有料)。

営業時間9:00〜16:30(最終入亭16:00)
休み12月29日〜1月3日

歩きつかれたら、時雨亭でひと休みして、殿様の気分で庭を眺めてみてはいかがでしょうか。呈茶の料金は改定されることがあるので、現地で確認しましょう。

四季の兼六園:桜・新緑・紅葉

兼六園は、季節ごとにまったくちがう表情を見せてくれます。

兼六園の桜
春の兼六園に咲く桜
写真: KimonBerlin / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

春は約40種類、400本以上の桜が咲くといわれ、とてもはなやかです。見ごろは例年4月の上旬ごろ。桜の時期には無料開園日が設けられることもあります。

春の兼六園
春の訪れを告げる花々
写真: Motokoka / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

桜より少し早い2月から3月には梅林で梅が咲き、春の訪れを告げてくれます。初夏にはカキツバタやツツジ、サツキが咲き、新緑がまぶしい季節になります。

紅葉の兼六園
秋の兼六園をいろどる紅葉
写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY 2.5)

秋は、山崎山や霞ヶ池のまわりが赤や黄色にそまります。見ごろは例年11月の中ごろから下旬ごろです。

冬の風物詩:雪吊りと雪景色

唐崎松の雪吊り
冬の風物詩・唐崎松の雪吊り
写真: Winniepix / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

兼六園の冬の名物が「雪吊り(ゆきづり)」です。北陸の重く湿った雪で松の枝が折れないように、木のてっぺんから縄を何本も張って枝をつるします。毎年11月1日ごろから、唐崎松から作業がはじまります。

円すい形に張られた縄の姿はとても美しく、雪が降ると、白い庭に縄の線がくっきりと浮かび上がります。

雪の兼六園
雪に包まれた灯籠と池
写真: tab2_dawa / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

雪の兼六園は、灯籠や橋、池が白くそまり、ほかの季節とはちがう静かな美しさに包まれます。雪道はすべりやすいので、すべりにくい靴で訪れましょう。

ライトアップと早朝開園

兼六園では、桜や紅葉、雪吊りの時期などに、夜のライトアップ(夜間開園)が行われることがあります。灯りに照らされた庭は幻想的で、昼間とはまったくちがう雰囲気です。日程は公式サイトのお知らせで確認しましょう。

また、兼六園では早朝開園(無料)も行われています。季節によって時間は異なり、たとえば4月から8月は朝4:00から開園しています。入園口は蓮池門口と随身坂口の2か所だけで、有料開園時間の15分前までに退園する必要があります。人の少ない朝の庭を、静かに散歩できるのは早朝開園ならではです。

写真撮影のポイント

徽軫灯籠を撮るなら、虹橋のたもとから灯籠と霞ヶ池をいっしょに写すのが定番です。ただし、この場所はとても混み合うので、撮影したら次の人にゆずりましょう。朝の早い時間は人が少なく、やわらかい光の中で撮影できます。

雪吊りは、唐崎松を霞ヶ池のむこう岸から眺めると、縄の広がりがよくわかります。紅葉の季節は山崎山のあたり、桜の季節は霞ヶ池のまわりがおすすめです。園内では、ほかの人のじゃまにならないように撮影しましょう。

園内の主な見どころは、桂坂口から徽軫灯籠、霞ヶ池、唐崎松、眺望台、噴水、雁行橋、時雨亭の順にまわると効率よく見学できます。

金沢城公園とあわせて楽しむ

金沢城の石川門
兼六園のすぐ向かいにある金沢城石川門
写真: そらみみ / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

兼六園のすぐ向かいには、前田家の居城だった金沢城の跡「金沢城公園」があります。兼六園の桂坂口を出て石川橋を渡ると、重要文化財の「石川門」が迎えてくれます。

金沢城公園では、復元された菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓などの建物を見学できます(有料)。兼六園と金沢城公園は隣り合っているので、セットでまわるのがおすすめです。

周辺の金沢観光

ひがし茶屋街
古い茶屋が並ぶひがし茶屋街
写真: Andrea Schaffer / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

兼六園のまわりには、金沢らしい観光スポットがたくさんあります。

  • ① 金沢21世紀美術館:兼六園から歩いてすぐの、現代アートの美術館
  • ② ひがし茶屋街:古い茶屋の建物が並ぶ、風情ある町並み
  • ③ 近江町市場:金沢の台所。新鮮な海鮮丼を味わえます
  • ④ 長町武家屋敷跡:土塀と石畳が続く、武士の屋敷町
  • ⑤ 石川県立美術館・いしかわ生活工芸ミュージアム:兼六園のすぐそばで、加賀の工芸にふれられます

金沢は、金箔や九谷焼、加賀友禅などの伝統工芸でも知られる街です。金箔のソフトクリームも、金沢ならではのおやつです。

金沢で味わいたいグルメ

金沢は、日本海の海の幸と、加賀百万石の食文化が育てたおいしいものがたくさんある街です。

  • ① 海鮮丼:近江町市場では、甘エビやブリ、のどぐろなど日本海の幸をたっぷり味わえます
  • ② 香箱ガニ:冬の短い期間だけ食べられる、金沢の人が楽しみにしているメスのズワイガニ
  • ③ 金沢おでん:車麩や赤巻など、金沢ならではの具が入ったおでん
  • ④ 治部煮:鴨肉や麩をとろみのあるだしで煮た、加賀の郷土料理
  • ⑤ 和菓子:金沢は京都・松江とならぶ和菓子の街。お茶といっしょに味わいたい
  • ⑥ 金沢カレーとハントンライス:地元の人に愛される洋食グルメ

兼六園の茶店通りや時雨亭でひと休みしたあと、近江町市場や香林坊のお店で金沢の味を楽しみましょう。

アクセス:金沢駅からの行き方

路線バスJR金沢駅から約12分「兼六園下・金沢城」下車、徒歩約5分(桂坂口)
路線バスJR金沢駅から約10分「広坂・21世紀美術館」下車、徒歩約5分(真弓坂口)
タクシー金沢駅から約10分
車北陸自動車道 金沢森本ICから約20分(兼六駐車場など)

金沢駅へは、北陸新幹線で東京から、また関西方面からは特急と北陸新幹線を乗りついで行くことができます。駅からは「城下まち金沢周遊バス」も便利です。

モデルコース:兼六園と金沢を1日で満喫

  • ① 朝、金沢駅からバスで兼六園へ
  • ② 桂坂口から入園し、徽軫灯籠と霞ヶ池へ
  • ③ 唐崎松、根上松、噴水、雁行橋をめぐる
  • ④ 時雨亭で抹茶をいただく
  • ⑤ 石川門から金沢城公園へ
  • ⑥ 近江町市場で海鮮丼のランチ
  • ⑦ 金沢21世紀美術館でアートにふれる
  • ⑧ 夕方、ひがし茶屋街を散策

兼六園の見学には、ゆっくり歩いて1時間半から2時間ほどを目安にしましょう。

観光のポイントと注意点

  • ① 園路は玉砂利で、すべりやすい場所もあるので歩きやすい靴で
  • ② 園内は禁煙。ペットの持ちこみや自転車などの通行はできません
  • ③ 有名な徽軫灯籠のまわりは混み合うので、朝の早い時間がおすすめ
  • ④ 無料開園日(桜の時期、文化の日、年末年始など)は混雑することがあります
  • ⑤ 車いすの貸し出しがあり、小立野口のあたりは平らで利用しやすくなっています
  • ⑥ 冬は雪道になるので、すべりにくい靴と防寒具を

よくある質問(Q&A)

兼六園の入園料はいくらですか?

大人(18歳以上)は320円、小人(6歳〜18歳未満)は100円です。65歳以上の方は、年齢がわかるものを見せると無料になります。

兼六園の開園時間は?

3月1日〜10月15日は7:00〜18:00、10月16日〜2月末日は8:00〜17:00です。最終入園は閉園の30分前です。

「兼六園」の名前の由来は?

宏大・幽邃・人力・蒼古・水泉・眺望という、すぐれた庭園の六つの長所を兼ね備えていることから名づけられました。

兼六園の雪吊りはいつ見られますか?

毎年11月1日ごろから作業がはじまり、冬のあいだ見ることができます。雪が降った日は、とくに美しい景色になります。

金沢駅から兼六園へはどう行けばいいですか?

路線バスで約12分の「兼六園下・金沢城」で降りて、歩いて約5分です。タクシーなら約10分です。

兼六園の見学にはどれくらい時間がかかりますか?

主な見どころをまわるなら、1時間半から2時間ほどが目安です。時雨亭でひと休みしたり、金沢城公園とあわせてまわったりするなら、半日ほど見ておきましょう。

まとめ:六つの美を兼ね備えた庭へ

兼六園は、前田家が200年近くかけて育ててきた、日本を代表する大名庭園です。徽軫灯籠と霞ヶ池、唐崎松の雪吊り、季節ごとの花と紅葉。一歩進むごとに景色が変わり、何度訪れても新しい発見があります。

金沢城や茶屋街とあわせて、加賀百万石の城下町・金沢の魅力をたっぷり味わってください。季節を変えてもう一度訪れれば、また新しい兼六園に出会えるはずです。

参考情報

※この記事の情報は執筆時点のものです。開園時間、入園料などは変わることがありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。

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