立山黒部アルペンルート

みくりが池
立山黒部アルペンルート
みくりが池
青空と立山の山々をうつすみくりが池
写真: くろふね / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

富山県と長野県をむすぶ「立山黒部アルペンルート」は、標高3,000メートル級の山々が連なる北アルプスを、のりものを乗りついで通りぬける山岳観光ルートです。総距離は37.2キロメートル、いちばん高いところといちばん低いところの差は1,975メートルにもなります。

春には高さ十数メートルの雪のかべ「雪の大谷」、夏には高山植物とエメラルド色の「みくりが池」、秋には山をそめる紅葉、そして日本一の高さをほこる「黒部ダム」の大迫力の放水。登山の経験がなくても、のりものだけで雲の上の大自然を楽しめるのが最大の魅力です。

ケーブルカー、高原バス、電気バス、ロープウェイと、6種類ほどののりものを乗りつぐ旅そのものも楽しく、台湾や香港からの旅行者にもとても人気があります。

この記事では、はじめてアルペンルートをおとずれる方に向けて、ルートの全体像、それぞれののりものと見どころ、運賃、季節ごとの楽しみ方、服装、アクセス、モデルコースまで、わかりやすく紹介します。

立山黒部アルペンルートの基本情報

まずは基本情報を表にまとめます。運賃や運行期間はかわることがあるので、お出かけ前に公式サイトで確認してください。

名称立山黒部アルペンルート
区間富山県・立山駅〜長野県・扇沢駅
総距離37.2キロメートル(最大高低差1,975メートル)
営業期間例年4月中旬〜11月30日ごろ(冬は運休)
運賃(片道)立山駅〜扇沢 大人10,940円、こども5,480円
公式サイト立山黒部アルペンルート

ルートの全区間が「中部山岳国立公園」の中にあり、一般の車は通れません。富山県側からも長野県側からも入ることができ、通りぬけることも、とちゅうで折り返すこともできます。

アルペンルートの歴史

立山は、富士山・白山とならぶ「日本三霊山」のひとつとして、むかしから信仰の山とされてきました。江戸時代には、多くの人が修行や参拝のために、けわしい山道を歩いて登りました。

今のアルペンルートができるきっかけになったのは、黒部ダムの建設です。ダムの工事のために、山をつらぬくトンネルがほられ、その道が観光にも使われるようになりました。そして1971年、立山駅から扇沢までの全線が開通しました。2026年は、全線開業から55周年にあたります。

むかしは何日もかけて歩いた山の上の世界に、今は1日で、しかものりものだけで行けるようになりました。そう考えると、アルペンルートの旅がもっと特別なものに感じられるはずです。

ルートの全体像

立山黒部アルペンルートの地図
立山駅から扇沢までのルート図
写真: Batholith / Wikimedia Commons(Public domain)

アルペンルートは、富山県側の立山駅から、長野県側の扇沢駅まで、つぎの順番でのりものを乗りつぎます。

立山駅→美女平立山ケーブルカー
美女平→室堂立山高原バス
室堂→大観峰立山トンネル電気バス
大観峰→黒部平立山ロープウェイ
黒部平→黒部湖黒部ケーブルカー
黒部湖→黒部ダム徒歩(約15分)
黒部ダム→扇沢関電トンネル電気バス

のりものによって車窓の景色や乗り心地がまったくちがうので、乗りつぎそのものがアトラクションのようです。通りぬけには、休憩や観光をふくめて半日から1日ほど見ておくと安心です。

立山ケーブルカーと美女平

立山ケーブルカー
立山駅と美女平をむすぶケーブルカー
写真: Alpsdake / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

富山県側のスタートは、立山駅から美女平までをむすぶ「立山ケーブルカー」です。急な山の斜面を、まっすぐぐんぐん登っていきます。

美女平は、樹齢数百年といわれる立山杉の森が広がる場所です。駅のまわりには散策路もあり、野鳥の声を聞きながら森の中を歩くことができます。駅の近くには大きな杉の木があり、森の空気を感じながら、つぎの高原バスに乗りかえます。

高原バスと弥陀ヶ原

弥陀ヶ原
高原バスから見た弥陀ヶ原
写真: Alpsdake / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

美女平から室堂までは、「立山高原バス」で約50分の山道を走ります。窓の外には、ブナや立山杉の森、遠くの山々、そして広い高原が次々とあらわれます。

弥陀ヶ原の湿原
小さな池が点在する弥陀ヶ原の湿原
写真: Ka23 13 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

とちゅうの「弥陀ヶ原」は、標高約1,930メートルに広がる湿原です。「餓鬼田」とよばれる小さな池が点在し、木道を歩いて散策できます。国際的に大切な湿地として、ラムサール条約にも登録されています。

称名滝

称名滝
日本一の落差をほこる称名滝
写真: Alpsdake / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

立山駅の近くには、落差350メートルで日本一の高さをほこる「称名滝」があります。4段になって流れ落ちる大きな滝で、国の名勝・天然記念物にも指定されています。

立山駅前から称名滝探勝バスが出ている時期もあるので、アルペンルートの前後に立ちよるのもおすすめです。雪どけの春には、となりに「ハンノキ滝」があらわれ、2本の滝がならぶ姿が見られることもあります。

室堂平

雪の季節の室堂平
雪をかぶった山と池
写真: lumoplank / Wikimedia Commons(CC0)

アルペンルートの中心が、標高2,450メートルの「室堂平」です。室堂ターミナルを出ると、目の前に立山の山々がそびえ、まるで別の世界に来たような景色が広がります。

室堂平には遊歩道が整備されていて、のりものをおりたあと、気軽に散策を楽しめます。運がよければ、国の特別天然記念物「ライチョウ」に出会えることもあります。

みくりが池

みくりが池と山々
夏のみくりが池とまわりの山
写真: Alpsdake / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

室堂ターミナルから歩いて約10〜15分のところにある「みくりが池」は、北アルプスでいちばん美しいといわれる火山湖です。風のない晴れた日には、池の水面に立山の山々がさかさまにうつり、すばらしい景色になります。

みくりが池のまわりには一周できる遊歩道があり、夏は高山植物、秋は紅葉を楽しめます。近くには、温泉に入れる山小屋もあります。池のまわりは石の多い道なので、歩きやすいくつで出かけましょう。

ライチョウに会えるかも

室堂平は、国の特別天然記念物「ライチョウ」が見られる場所として知られています。ライチョウは、高い山にだけすむ鳥で、季節によって羽の色がかわります。夏は茶色っぽいまだら模様、冬は真っ白な羽になり、まわりの景色にとけこみます。

ライチョウは、天気がくもりの日や、朝と夕方に姿を見せることが多いといわれています。見つけても、追いかけたり、近づきすぎたりせず、静かに見守りましょう。えさをあげるのもいけません。

立山室堂

立山室堂
日本最古の山小屋といわれる立山室堂
写真: Saigen Jiro / Wikimedia Commons(CC0)

室堂平には、「立山室堂」という古い山小屋が残っています。江戸時代に建てられたといわれ、現存する日本最古の山小屋として、国の重要文化財に指定されています。

むかし、立山は信仰の山としてあがめられ、多くの人が修行や参拝のために登りました。立山室堂は、そうした人たちがとまる場所でした。アルペンルートの景色といっしょに、立山の歴史にもふれてみてください。

雪の大谷(春)

雪の大谷
高い雪のかべが続く雪の大谷
写真: タチヤマカムイ / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

アルペンルートの春の名物が、「雪の大谷」です。室堂付近は日本でも有数の豪雪地帯で、道路の除雪をすると、両側に高さ十数メートルの雪のかべができます。高い年には20メートル近くになることもあるといわれています。

開通からしばらくのあいだは、この雪のかべのあいだを歩ける「雪の大谷ウォーク」が行われます。室堂は平地より気温が15度ほど低いので、例年6月下旬ごろまで雪のかべを見ることができます。

立山ロープウェイと大観峰

大観峰駅
がけにはりつくように建つ大観峰駅
写真: Alpsdake / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

室堂から立山トンネル電気バスで大観峰へ。大観峰駅は、がけにはりつくように建っていて、屋上の展望台からは黒部湖や後立山連峰を見わたせます。

立山ロープウェイ
支柱のない立山ロープウェイ
写真: TRJN / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

大観峰から黒部平までは「立山ロープウェイ」です。全長1.7キロメートルのあいだに支柱が1本もない「ワンスパン方式」で、日本最長といわれます。大きな窓から見る景色は、まるで空中散歩のようです。秋には、眼下に広がる紅葉の山々と、正面にそびえる後立山連峰の組み合わせが見事で、アルペンルートでいちばん人気の撮影ポイントのひとつになっています。

黒部ケーブルカーと黒部平

黒部平は、紅葉の名所としても知られる展望スポットです。高山植物園があり、夏は花、秋は色づいた山々を楽しめます。

黒部平から黒部湖までは、「黒部ケーブルカー」に乗ります。このケーブルカーは、景観をまもるために全線がトンネルの中を走る、めずらしいケーブルカーです。

黒部ダム

黒部ダム
観光放水が行われる黒部ダム
写真: foooomio / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

アルペンルートの最大の見どころのひとつが、「黒部ダム」です。高さ186メートルで日本一の高さをほこるアーチ式ダムで、7年の歳月と、のべ1,000万人もの人の力でつくられました。「くろよん」という愛称でも知られています。

黒部ダムの放水
ごう音とともに流れ落ちる黒部ダムの放水
写真: Ka23 13 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

例年6月下旬から10月中旬ごろには、ダムから大量の水を放流する「観光放水」が行われます。ごう音とともに水しぶきが上がり、晴れた日にはにじがかかることもあります。ダムの上を歩いたり、展望台から見下ろしたりして、その大きさを体感してください。展望台へは階段を200段ほど上りますが、上から見るダムと黒部湖の景色は、がんばって上る価値があります。黒部湖では、日本一高いところを走る遊覧船に乗れる時期もあります。

季節ごとの楽しみ方

秋の立山の谷
紅葉と雪山がならぶ秋の立山
写真: lumoplank / Wikimedia Commons(CC0)

アルペンルートは、季節によってまったくちがう表情を見せてくれます。

4月〜6月雪の大谷、雪の高原
7月〜8月高山植物、ライチョウ、すずしい高原の散策
9月〜10月紅葉(標高の高いところから順に色づく)
11月初冬の雪景色

紅葉は、9月中旬ごろに室堂平から色づきはじめ、10月下旬ごろには立山駅近くの美女平まで下りてきます。標高によって見ごろがずれるので、どの時期に行っても、どこかで紅葉を楽しめるのもアルペンルートならではです。山の上で雪、中腹で紅葉、ふもとで緑という「三段紅葉」が見られる年もあります。

運賃とWEBきっぷ

主な区間の大人運賃は、つぎのとおりです(2026年2月時点)。

立山駅〜扇沢(片道)大人10,940円、こども5,480円
立山駅〜黒部湖(往復)大人16,480円
扇沢〜室堂(往復)大人12,300円

こども運賃は小学生が対象で、小学校に入る前の子どもは無料です。公式の「WEBきっぷ」を使うと、乗る便を事前に予約できます。人気の時期は当日券が売り切れることもあるので、早めの予約がおすすめです。

服装と持ち物

室堂平は標高2,450メートルで、平地よりずっと寒い場所です。季節にあわせた服装で出かけましょう。

春(4〜6月)マイナス5〜10度ほど。真冬の服装、サングラス、すべりにくいくつ
夏(7〜8月)10〜20度ほど。上着、ウインドブレーカー、日焼け対策
秋(9〜10月)10度前後。フリースや厚手の長そで
11月氷点下になることも多い。しっかりした防寒具

山の天気はかわりやすいので、晴れていても雨具をもっていきましょう。歩きやすいスニーカーや、日ざしをさける帽子と日焼け止めもあると安心です。

山の上のグルメとおみやげ

室堂ターミナルや大観峰、黒部ダムなどには、食堂や売店があります。山の上で食べるあたたかいそばやカレーは、体があたたまり、格別のおいしさです。

黒部ダムでは、ダムの形をイメージした「黒部ダムカレー」が名物として知られています。ごはんをダムに、ルーを湖に見立てた楽しいカレーで、記念に食べてみるのもおすすめです。

おみやげには、立山の名水を使ったお菓子や、ライチョウをモチーフにしたグッズなどがあります。富山県側では、ますのすしやしろえびなど、富山の名物もぜひ味わってください。

山の上に泊まる

室堂平には、ホテルや山小屋があります。泊まると、日帰りの人がいなくなった静かな高原で、夕日や満天の星空、朝日に照らされる立山の山々を見ることができます。

日帰りでもアルペンルートは楽しめますが、山の上の夜と朝は、泊まった人だけの特別な時間です。時間に余裕がある方は、1泊してゆっくりすごすのもおすすめです。

アクセス

富山県側富山駅(電鉄富山駅)から富山地方鉄道で立山駅まで約1時間
長野県側信濃大町駅からバスで扇沢まで約40分
車立山駅・扇沢駅の駐車場に止めて、のりものに乗りかえ

通りぬけた場合、車は出発地に置いたままになります。公式サイトでは、車の回送サービスや、出発地にもどれるバスプランも紹介されています。

おすすめモデルコース

8:00立山駅からケーブルカーで美女平へ
8:30高原バスで弥陀ヶ原をながめながら室堂へ
9:30室堂平を散策、みくりが池へ
11:30電気バスで大観峰、ロープウェイで黒部平へ
13:00黒部ケーブルカーで黒部湖へ、黒部ダムを見学
14:30関電トンネル電気バスで扇沢へ

富山側から長野側へ通りぬける場合のコース例です。季節によっては、室堂から富山方面への最終便が早い時間になるので、時刻表をかならず確認しましょう。

アルペンルートを楽しむポイント

  • ① 運行期間は例年4月中旬〜11月30日ごろ。冬は乗れない。
  • ② 人気の時期はWEBきっぷで早めに予約する。
  • ③ 室堂平はとても寒い。季節にあわせた防寒具を。
  • ④ 最終便の時刻を確認して、余裕のある計画を。
  • ⑤ 黒部ダムの観光放水は例年6月下旬〜10月中旬ごろ。

よくある質問

立山黒部アルペンルートはいつ乗れますか?

例年4月中旬から11月30日ごろまでです。冬は運休します。

立山駅から扇沢までの運賃はいくらですか?

片道で大人10,940円、こども5,480円です(2026年2月時点)。

雪の大谷はいつ見られますか?

例年、開通の4月中旬ごろから6月下旬ごろまで見られます。

通りぬけにはどれくらい時間がかかりますか?

観光をふくめて半日から1日ほど見ておくと安心です。

黒部ダムの観光放水はいつですか?

例年6月下旬から10月中旬ごろです。年によってかわるので確認してください。

夏でも寒いですか?

室堂平は夏でも10〜20度ほどで、朝晩や天気の悪い日は冷えこみます。上着をもっていきましょう。

まとめ

立山黒部アルペンルートは、のりものを乗りつぐだけで、北アルプスの雄大な自然を体験できる特別なルートです。雪の大谷、みくりが池、黒部ダムと、どこを切り取っても絶景の連続です。

季節ごとにまったくちがう景色が待っているので、何度でもおとずれたくなる場所です。服装と時刻表をしっかり準備して、雲の上の旅を楽しんでください。

参考情報

※この記事の情報は執筆時点のものです。運賃や運行期間などはかわることがあるので、最新の情報は公式サイトでご確認ください。

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