

写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY 2.5)
北アルプスの山々を背に、黒い壁の天守が堀の水面に美しく映る。長野県松本市の「松本城(まつもとじょう)」は、国宝に指定された5つの天守のひとつで、日本を代表するお城です。
松本城の天守は、江戸時代以前に建てられて今も残る「現存12天守」のひとつです。なかでも五重六階の天守としては、日本でいちばん古いものといわれています。黒い漆塗りの壁が特徴で、その姿から「烏城(からすじょう)」とも呼ばれています。
天守の中に入ると、戦国時代の戦いにそなえたしかけや、急な木の階段など、400年以上前の城の姿がそのまま残っています。城のまわりには、なまこ壁の蔵が並ぶ中町通りや、カエルの街・縄手通りなど、城下町の散策も楽しめます。
この記事では、松本城の歴史と天守の見どころ、観覧料と開場時間、四季の楽しみ方、城下町の街歩き、グルメ、アクセス、モデルコースまで、はじめての人にもわかりやすく紹介します。
松本城の基本情報
まずは基本の情報を表にまとめました。時間や料金は変わることがあるので、お出かけ前に公式サイトで確認してください。
| 名称 | 国宝 松本城 |
|---|---|
| 所在地 | 長野県松本市丸の内4-1 |
| 国宝 | 大天守・乾小天守・渡櫓・辰巳附櫓・月見櫓の5棟 |
| 開場時間 | 8:30〜17:00(最終入場16:30) |
| 休み | 12月29日〜31日 |
| 観覧料(一般) | 電子チケット(日時指定)1,200円、紙チケット(当日券)1,300円 |
| 観覧料(小・中学生) | 400円 |
| アクセス | JR松本駅から徒歩約20分 |

写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY 2.5)
松本城の歴史
松本城のはじまりは、戦国時代にこの地に築かれた「深志城(ふかしじょう)」だといわれています。その後、豊臣秀吉の家臣・石川数正(いしかわかずまさ)と康長(やすなが)の父子が城を大きく整え、文禄2〜3年(1593〜94年)ごろに、大天守・乾小天守・渡櫓が築かれたというのが松本市の公式見解です。
この時代、関東には徳川家康がいました。松本城は、家康を監視するために秀吉が配置した城のひとつだったといわれています。そのため、天守には戦いにそなえたさまざまなくふうが残されています。
明治時代になると、全国の多くの城がこわされました。松本城も売りに出され、こわされそうになりましたが、地元の人々が力を合わせて買いもどし、天守を守りました。その後も、天守がかたむいたときには明治の大修理が行われるなど、松本城は市民の手によって守られてきた城なのです。
昭和11年(1936年)に天守5棟が国宝に指定され、戦後の昭和27年(1952年)にあらためて国宝に指定されました。
明治時代、天守を買いもどすために力をつくしたのが、地元の市川量造(いちかわりょうぞう)です。また、天守がかたむいたときには、小林有也(こばやしうなり)が中心となって修理のための寄付を集めました。
天守のつくりと見どころ

写真: Lightning toothed whale (稲妻ノ歯鯨) / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
松本城の天守群は、大天守・乾小天守(いぬいこてんしゅ)・渡櫓(わたりやぐら)・辰巳附櫓(たつみつけやぐら)・月見櫓(つきみやぐら)の5つの建物がつながってできています。このように複数の建物を組み合わせた形を「連結複合式」といいます。
大天守と乾小天守、渡櫓は、戦国時代の終わりに戦いを想定して築かれました。壁には弓や鉄砲をうつための小さな窓「狭間(さま)」が115か所、石を落としたり鉄砲をうったりするための「石落(いしおとし)」が11か所あります。1・2階の壁の厚さは約29センチもあり、内堀の幅は、火縄銃がねらいを外さないぎりぎりの約60メートルにつくられています。
月見櫓
一方、辰巳附櫓と月見櫓は、それから約40年後、平和になった江戸時代のはじめに建てられました。月見櫓は、その名のとおり月を眺めるための建物で、三方の戸を開け放つと、風が通りぬける開放的なつくりになっています。戦いのための天守と、優雅な月見のための櫓。ふたつの時代がひとつのお城の中に共存しているのが、松本城の大きな魅力です。
天守の内部を歩く

写真: Yazan Badran / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
天守の中は土足禁止です。入口でくつを入れる袋をもらい、くつをぬいで中に入ります。
中には、昔のままの太い柱や梁が残り、鉄砲や武具などの展示もあります。階段はとても急で、いちばん急なところでは約61度もあります。階段の数は全部で約140段。手すりにつかまりながら、ゆっくり上り下りしましょう。安全のため、階段の近くでの撮影は禁止されています。
3階は、外からは見えない「かくし階」で、窓がなく薄暗い空間です。4階は城主の部屋とされる「御座所」で、ほかの階より天井が高くつくられています。

写真: Adrián Pérez / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)
最上階の6階からは、松本の街並みと、まわりを囲む北アルプスや美ヶ原の山々を見わたすことができます。窓からは、堀にかかる赤い埋橋(うずみばし)も見下ろせます。
天守内の見学には、空いているときで30〜40分、混雑時は60分ほどかかります。ゴールデンウィークやお盆などは、天守に入るまで長い時間待つこともあるので、時間に余裕をもって訪れましょう。
天守にまつられた「二十六夜神」
松本城の天守の最上階には、「二十六夜神(にじゅうろくやしん)」という神さまがまつられています。江戸時代、ある藩士の前に美しい女性があらわれ、「二十六夜の月をまつれば、城は栄える」と告げたという伝説が残っています。
天守の天井近くを見上げると、この神さまをまつる場所を見ることができます。松本城が長い年月、火事や災害をまぬがれて残ってきたのは、この神さまのおかげだと考える人もいます。
本丸庭園と城門

写真: ぺ有家音 / Wikimedia Commons(CC0)
本丸庭園への入口は、南側の「黒門(くろもん)」だけです。黒門は本丸の正門で、二の門と一の門からなる「枡形(ますがた)」になっています。二の丸には、太鼓門(たいこもん)という大きな門もあります。
本丸庭園には、本丸御殿の跡や、天守を眺めるベンチなどがあり、ゆったりと散策できます。庭園内では、忍者などの衣装を着た「松本城おもてなし隊」が、記念撮影を手伝ってくれることもあります。

写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY 2.5)
堀にかかる赤い「埋橋」は、松本城の写真によく登場する人気の撮影スポットです。いまは橋を渡ることはできませんが、天守と橋をいっしょに写すことができます。
四季の松本城
松本城は、季節ごとにまったくちがう景色を見せてくれます。
春は、松本城公園に約300本の桜が咲き、天守と桜、北アルプスの残雪がいっしょに見られる、松本城でいちばん人気の季節です。夜には桜のライトアップも行われます。
夏は、堀の水面に青空と緑が映り、さわやかな景色が広がります。秋は木々が色づき、黒い天守と紅葉のコントラストが美しい季節です。

写真: lumoplank / Wikimedia Commons(CC0)
冬は、北アルプスが雪化粧し、天気のよい日には、白い山々を背にした黒い天守という、松本城ならではの景色を見ることができます。雪が積もった日の天守は、とくに幻想的です。

写真: lumoplank / Wikimedia Commons(CC0)
写真撮影のポイント
松本城の定番の撮影スポットは、内堀の南側から、天守と赤い埋橋をいっしょに写す場所です。晴れた日には、天守の後ろに北アルプスの山々が見えることもあります。
風のない日は、堀の水面に天守がくっきりと映る「逆さ松本城」を撮影できます。朝の早い時間は風が弱いことが多く、人も少ないのでおすすめです。夜のライトアップの時間も、水面に映る天守が美しく撮れます。
夜の松本城

写真: Luka Peternel / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
松本城の天守は、一年を通して日没から22:00までライトアップされています。黒い天守が夜空に浮かびあがり、内堀の水面にくっきりと映る姿はとても幻想的です。

写真: Shinya Takei / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
夜は本丸庭園には入れませんが、内堀のまわりの松本城公園から、ライトアップされた天守を眺めることができます。夕食のあとに散歩をかねて訪れるのもおすすめです。
松本城の一年のイベント
松本城では、一年を通してさまざまなイベントが行われます。
- ① 夜桜会(春):ライトアップされた桜と天守を楽しめる、春の人気イベント
- ② 松本城太鼓まつり(夏):天守を背景に、迫力ある太鼓の演奏が響きわたります
- ③ 薪能(夏):かがり火の中で、天守を背景に能が演じられます
- ④ 氷彫フェスティバル(冬):氷でつくられた美しい彫刻が、松本城公園に並びます
開催時期や内容は年によって変わるので、公式サイトのイベント情報を確認しましょう。イベントの時期に合わせて訪れると、いつもとはちがう松本城の表情に出会えます。
旧開智学校

写真: Mnd / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
松本城の北にある「旧開智学校(きゅうかいちがっこう)」は、明治9年(1876年)に建てられた学校の建物です。和と洋をまぜあわせた「擬洋風建築」と呼ばれる独特のデザインで、2019年に、近代の学校建築としてはじめて国宝に指定されました。
八角形の塔や、天使の彫刻がかざられた玄関など、見どころがたくさんあります。松本城との共通券もあるので、あわせて訪れるのがおすすめです。見学できる日や時間は、事前に公式情報で確認しましょう。
城下町を歩く:中町通りと縄手通り
中町通り

写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY 2.5)
松本城の南に広がる城下町には、昔ながらの街並みが残っています。「中町通り(なかまちどおり)」には、白と黒の格子模様が美しい「なまこ壁」の蔵が並び、蔵を利用したカフェやクラフトのお店、民芸品のお店などが軒をつらねています。

写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY 2.5)
松本は民芸や工芸の街としても知られ、手しごとの器や家具のお店を見てまわるのも楽しい時間です。
縄手通り

写真: 663highland / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
女鳥羽川(めとばがわ)ぞいの「縄手通り(なわてどおり)」は、カエルの街として知られる商店街です。通りのあちこちにカエルの像や飾りがあり、レトロな雑貨屋さんや食べ歩きのお店が並んでいます。通りのとなりには、四柱神社(よはしらじんじゃ)もあります。
松本を拠点に上高地・安曇野へ
松本は、北アルプスの大自然への玄関口でもあります。松本から電車とバスを乗りついで、日本を代表する山岳景勝地・上高地(かみこうち)へ行くことができます(上高地は冬は閉山)。
また、北アルプスのふもとに広がる安曇野(あづみの)には、わさび農場や美術館が点在し、のどかな田園風景を楽しめます。松本城と城下町を見たあと、松本に泊まって翌日は大自然へ。そんな旅のプランもおすすめです。
松本で味わいたいグルメ
信州・松本には、山国ならではのおいしいものがたくさんあります。
- ① 信州そば:清らかな水と冷涼な気候で育ったそばは、香りがよく、松本の名物です
- ② 山賊焼き:鶏肉をにんにく入りのたれにつけて揚げた、松本の郷土料理
- ③ おやき:野菜やあんこを小麦粉の生地で包んで焼いた、信州の素朴なおやつ
- ④ 信州りんご:りんごを使ったスイーツやジュースも人気です
- ⑤ 地酒:北アルプスの水でつくられた日本酒も楽しめます
城下町には、古い蔵を利用したそば屋さんや食事処も多く、街歩きのとちゅうで気軽に立ち寄れます。
アクセス:松本駅からの行き方
| JR松本駅から | 徒歩約20分 |
|---|---|
| 周遊バス | 松本駅から周遊バス「タウンスニーカー」で松本城周辺のバス停へ |
| 東京から | JR特急「あずさ」で新宿駅から松本駅まで約2時間40分 |
| 名古屋から | JR特急「しなの」で名古屋駅から松本駅まで約2時間 |
| 車 | 長野自動車道「松本IC」から約20分(近くの市営駐車場を利用) |
松本城には無料駐車場がありません。近くの市営駐車場を利用するか、電車とバス、徒歩で訪れるのがおすすめです。松本駅からは、城下町を歩きながら向かうのが楽しいルートです。
モデルコース:松本城と城下町を1日で満喫
- ① 朝、JR松本駅から城下町を歩いて松本城へ
- ② 黒門から本丸庭園に入り、天守を見学
- ③ 最上階から北アルプスと松本の街を眺める
- ④ 埋橋と天守をいっしょに写真に撮る
- ⑤ 旧開智学校を見学
- ⑥ 城下町で信州そばのランチ
- ⑦ 中町通りで蔵のお店めぐり、縄手通りで食べ歩き
- ⑧ 夜、ライトアップされた天守を眺める
時間があれば、上高地や安曇野、美ヶ原高原など、松本を拠点にした大自然の旅もおすすめです。
見学のポイントと注意点
- ① 天守の階段はとても急なので、動きやすい服装とはきやすいくつで
- ② 天守内にはトイレやエレベーターはありません
- ③ スカートよりもパンツスタイルがおすすめです
- ④ 大きな荷物は売店などに預け、身軽に見学しましょう
- ⑤ ゴールデンウィークやお盆は入場制限があり、長く待つことも
- ⑥ 本丸庭園内は飲食禁止。ドローンの飛行もできません
よくある質問(Q&A)
松本城の観覧料はいくらですか?
一般は、電子チケット(日時指定)が1,200円、紙チケット(当日券)が1,300円です。小・中学生は400円、未就学児は無料です。
松本城の開場時間は?
8:30〜17:00で、最終入場は16:30です。休みは12月29日〜31日です。
天守の見学にはどれくらい時間がかかりますか?
天守に入ってから出るまで、空いているときは30〜40分、混雑時は60分ほどです。
松本城のライトアップはいつですか?
一年を通して、日没から22:00までライトアップされています。
松本駅から松本城へはどう行けばいいですか?
歩いて約20分です。周遊バス「タウンスニーカー」を使うこともできます。
なぜ「烏城」と呼ばれるのですか?
黒い漆塗りの壁が特徴で、その黒い姿がカラスを思わせることから、「烏城」とも呼ばれています。
まとめ:北アルプスと黒い天守が出会う城へ
松本城は、戦国時代の面影を今に伝える国宝の天守と、それを守り続けてきた人々の思いがつまったお城です。急な階段を上って最上階から北アルプスを眺め、城下町の蔵の街並みを歩き、信州そばを味わう。松本ならではの旅を、ゆっくり楽しんでください。季節を変えて訪れれば、桜、新緑、紅葉、雪と、そのたびにちがう松本城の美しさに出会えるはずです。
参考情報
※この記事の情報は執筆時点のものです。開場時間、観覧料などは変わることがありますので、最新情報は公式サイトでご確認ください。














