温泉の泉質10種類ガイド|温泉成分表の見方・違い・選び方

環境省資料で読む温泉表示

温泉の泉質10種類ガイド|温泉成分表の見方・違い・選び方

先に結論:「温泉の泉質は10種類」とよく説明されますが、正確には療養泉が10種類に分類されます。すべての温泉が10分類のどれかに入るわけではありません。施設では泉質名だけで決めず、源泉温度、pH、成分、分析日、禁忌症・注意事項に加え、別途掲示される加水・加温・循環・消毒の有無まで確認すると、実際の浴槽を理解しやすくなります。

公的情報確認日:2026年8月1日

温泉の泉質10種類と温泉成分表を比較して読む

温泉と療養泉は同じではない

温泉法上の温泉は、地中から湧く温水・鉱水・水蒸気などで、源泉温度が25℃以上、または法律で定める物質のいずれかが基準量以上含まれるものです。このため、25℃未満でも成分基準を満たせば温泉になり得ます。

療養泉は、温泉のうち、温度または含有物質について別の基準を満たす鉱泉です。現在は単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含よう素泉、硫黄泉、放射能泉の10種類に分類されます。成分が少ないという理由だけで、温泉ではないと判断することはできません。

療養泉10種類の違いを一覧で確認

次の表は、環境省の分類に沿って、表示で注目する名称や成分を簡潔に整理したものです。療養目的の適応症は泉質だけでなく健康状態や利用方法にも関係するため、ここでは効能を断定せず、分析書を読むための目印に絞ります。

療養泉の種類 表示で見る主な目印 旅行者が確認すること
単純温泉 泉温25℃以上で、成分が療養泉の各成分基準に達しないもの。pH8.5以上はアルカリ性単純温泉 「成分がない」の意味ではない。泉温とpHも確認
塩化物泉 陰イオンの主成分が塩化物イオン 陽イオンとの組み合わせを含む正式な泉質名を確認
炭酸水素塩泉 陰イオンの主成分が炭酸水素イオン 旧泉質名では重曹泉などと案内される場合がある
硫酸塩泉 陰イオンの主成分が硫酸イオン カルシウム・ナトリウムなど陽イオンも読む
二酸化炭素泉 遊離二酸化炭素が基準量以上 浴槽での状態は温度や設備でも変わるため現地表示を優先
含鉄泉 総鉄イオンが基準量以上 分析直後の源泉と浴槽で色調が異なる場合がある
酸性泉 水素イオンが基準量以上 pHと施設の入浴上の注意を確認
含よう素泉 よう化物イオンが基準量以上 飲用の可否は別。浴用・飲用の許可表示を混同しない
硫黄泉 総硫黄が基準量以上 においや色だけで判定せず分析書の泉質名を見る
放射能泉 ラドンが基準量以上 名称だけで危険と判断せず、施設の正式表示と注意事項を読む

一つの温泉に複数の特徴がある場合、正式な泉質名は陽イオン、陰イオン、特殊成分などを組み合わせて示されます。観光案内の短い呼び名と、脱衣所などにある分析書の正式名称が異なるように見えることもあります。

温泉旅館で源泉名・分析日・泉質名を確認する

温泉成分表・温泉分析書はこの順番で読む

温泉利用施設では、登録分析機関による分析結果に基づき、成分、禁忌症、入浴または飲用上の注意などが掲示されます。分析は原則として10年ごとに行う制度です。旅行者は数字をすべて暗記せず、次の順に見ると要点をつかめます。

確認項目 分かること 読み違いを防ぐポイント
1. 源泉名・採取地 どの源泉を分析したか 複数浴槽が同じ源泉とは限らない
2. 分析日・分析機関 いつ、どの登録分析機関が調べたか 館内に複数の分析書があるときは浴槽との対応を見る
3. 源泉温度 採取地点での温度 実際の浴槽温度とは別
4. 湧出量・湧出方法 毎分の量と、自噴・動力揚湯など 湧出量だけで浴槽の新鮮さや優劣は決まらない
5. pH・知覚的試験 酸性・中性・アルカリ性の傾向、色・におい・味など pHは源泉の測定値。体感だけで泉質を判定しない
6. 成分の組成 陽イオン、陰イオン、非解離成分、溶存ガスなど 一つの有名成分だけでなく単位と総量も見る
7. 泉質名 分析結果に基づく正式な分類 旧泉質名や通称とは表現が異なることがある
8. 禁忌症・注意事項 避けるべき状態、入浴・飲用時の注意 持病、妊娠、体調不良時は自己判断より医師と施設案内を優先

pHは泉質名とは別の情報

pHは水素イオン濃度を示す指標で、7付近が中性、7より小さい側が酸性、7より大きい側がアルカリ性です。ただし、pHだけで療養泉10分類が決まるわけではありません。例えば「アルカリ性単純温泉」という名称ではpHが分類に関係しますが、ほかの泉質では含有成分と合わせて正式名称を読みます。

肌触り、におい、湯の色は旅行の楽しみですが、浴槽の温度、時間の経過、設備、清掃などでも印象が変わります。「透明だから単純温泉」「白濁しているから硫黄泉」のように見た目だけで決めないことが大切です。濁り湯についてはにごり湯の色と成分の読み方も参照してください。

加水・加温・循環・消毒は成分分析書と分けて確認

温泉分析書は採取した源泉の性質を示します。一方、浴槽で加水、加温、循環ろ過、入浴剤・消毒を行っているかは、温泉利用状況の掲示で確認します。源泉温度が高すぎる、低い、湯量を安定させる、衛生管理を行うなど、設備運用には理由があります。

  • 加水:水を加えているか。温度調整などの理由も確認
  • 加温:源泉または浴槽を温めているか
  • 循環ろ過:浴槽の湯を設備へ通して再利用しているか
  • 消毒:消毒処理の有無と方法
  • 入浴剤等:成分調整や衛生管理のため加えているものがあるか

これらの有無だけで温泉の良し悪しを一律に順位付けすることはできません。「源泉かけ流し」は湯の使い方を表す言葉で、泉質名ではありません。詳しくは源泉かけ流しの意味と表示の見方で確認できます。

自分に合う温泉を泉質名だけで選ばない

旅行先を選ぶときは、泉質名に加えて、湯温、入浴時間、浴槽までの段差、露天・内湯、貸切の可否、混雑、休憩場所を確認してください。同じ泉質名でも源泉温度や浴槽の運用、施設の環境は異なります。

皮膚が敏感な人、治療中の人、体調に不安がある人は、刺激の強弱を泉質名だけで自己判断せず、掲示された禁忌症・注意事項を読み、必要に応じて医師へ相談します。入浴時間と水分補給は温泉の入浴時間・体調管理ガイド、基本的な入り方は日本の温泉マナーガイドで確認できます。

正式な泉質名は「特殊成分・陽イオン・陰イオン」の順に読む

分析書には「含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉」のように長い名称が書かれることがあります。先頭の「含硫黄」は一定量以上の特殊成分、中央の「ナトリウム・カルシウム」は主要な陽イオン、後半の「塩化物」は主要な陰イオンを示す例です。短い観光名称だけでなく、ハイフンで区切って読むと成分構成を理解しやすくなります。

表示位置 読み方
特殊成分 含硫黄、含鉄など 基準量を満たす特徴的成分
陽イオン ナトリウム、カルシウム 主要成分を割合の大きい順に確認
陰イオン 塩化物、炭酸水素塩 療養泉分類につながる主要な陰イオン
末尾 温泉・冷鉱泉 源泉温度などに基づく名称

旧泉質名が併記される場合もあります。新旧名称を自己流で置き換えず、環境省の新旧泉質名対照表と現地の正式表示を確認します。温泉中の浮遊物は泉質名だけでは判断できないため、湯の花ガイドも参照してください。

低張性・等張性・高張性、低温泉・高温泉も分けて読む

正式泉質名の括弧内などには、浸透圧、液性、温度の区分が添えられます。これらは療養泉10種類とは別の軸です。「弱アルカリ性」「高温泉」だけを泉質名だと思わず、成分による分類と補助表示を一組で確認します。

代表的な表示 旅行者が見ること
浸透圧 低張性・等張性・高張性 溶存物質などに基づく区分。優劣ではない
液性 酸性・弱酸性・中性・弱アルカリ性・アルカリ性 pHと注意事項を確認
温度 冷鉱泉・低温泉・温泉・高温泉 源泉温度であり浴槽温度とは別

高温泉でも浴槽は適温へ調整されることがあり、冷鉱泉でも加温して入浴できます。設備表示は源泉かけ流し・加水・加温ガイド、入浴時間は温泉の体調管理ガイドで確認してください。

予約前は泉質名と浴槽条件をセットで比較

泉質を旅行目的にする場合は、宿の公式ページに書かれた短い説明だけで決めず、源泉名、分析日、浴槽との対応、加水・加温・循環・消毒、清掃時間、男女入替を確認します。同じ宿に複数の源泉や浴槽があり、露天風呂と内湯で条件が異なる場合もあります。

分析書
源泉名、分析日、正式泉質名。
浴槽
どの源泉をどこで使うか。
運用
加水・加温・循環・消毒。

客室風呂を希望する場合は温泉付き客室の選び方、貸切風呂は貸切温泉ガイド、日帰り利用は日帰り温泉ガイドで、泉質以外の利用条件も確認してください。

飲泉の可否は浴用の泉質とは別です。温泉を飲めるかは飲用許可・量・持ち帰りガイドで確認し、指定飲泉口以外から飲まないでください。

温泉の泉質・成分表でよくある質問

温泉の泉質は全部で何種類ですか?

環境省の基準では療養泉が10種類に分類されます。ただし、温泉法上の温泉がすべて療養泉とは限らないため、「すべての温泉が10種類のどれか」とは言えません。

25℃未満でも温泉になりますか?

なります。源泉温度が25℃未満でも、温泉法で定める物質のいずれかを基準量以上含めば温泉に該当します。浴槽では加温して利用することがあります。

単純温泉は成分が入っていない温泉ですか?

成分が入っていないという意味ではありません。泉温が25℃以上で、療養泉の特定成分基準には達していないものが単純温泉に分類されます。pH8.5以上はアルカリ性単純温泉と呼ばれます。

pHが高いほど良い温泉ですか?

一概には言えません。pHは酸性・中性・アルカリ性の傾向を示す情報の一つで、温泉全体の優劣を決める点数ではありません。泉質名、成分、湯温、注意事項と一緒に見ます。

源泉かけ流しは泉質の名前ですか?

泉質名ではありません。源泉かけ流しは浴槽での湯の利用方法を表す言葉です。成分分析書と、加水・加温・循環・消毒などの利用状況表示を分けて確認してください。

温泉分析書は何年ごとに更新されますか?

温泉法の制度では、温泉成分の定期的な分析は原則10年ごとです。掲示された分析年月日と登録分析機関を確認し、複数源泉を使う施設では利用する浴槽との対応も見てください。

低張性・等張性・高張性は泉質10種類とは別ですか?

別の補助的な表示です。溶存物質などに基づく浸透圧の区分で、療養泉10種類の名称だけでは分からない情報です。正式泉質名と施設の注意事項を一緒に読みます。

同じ宿の浴槽はすべて同じ泉質ですか?

同じとは限りません。複数源泉の利用、混合、浴槽ごとの加水・加温・循環などが異なる場合があります。分析書と利用状況掲示がどの浴槽に対応するかを確認してください。

確認した公的情報

温泉の定義、療養泉の分類、分析・掲示制度、泉質名の扱いは環境省の温泉法関連資料を確認して整理しました。施設固有の泉質・利用方法は、旅行日に現地掲示と施設の公式案内を優先してください。

複数の温泉浴槽で泉質と利用状況の掲示を確認する